古い木と、新しい木の香り。
そして漂う、芳しい紅茶の薫り。
風吹けば その風に乗って薫りを運ぼう。
此方は薫風亭、吹く風に薫る店。
その、開店前。
店長で、ウェイトレスで、コックのフィリス・ディーンライトは悩んでいた。
いつも着ているウェイトレスの服。
それが常よりもきついように感じる。
太ったのだろうか、とか。 まさか洗濯して縮んだのだろうか、とか。
不安を覚えつつも、袖を通し終えて。
急いで、姿見の前に向かおうとした時に
住み込みで働いてもらっている、フェアリーの女の子。
マサムネに、声をかけられる。
「そろそろお店開けるですよー?」
「あ―――はい。 あの、服が、きついのです、が。
何処か、変、ですか? その、太ってたり、とか、ですが」
小さな彼女は、どこか面白そうな笑顔を浮かべながら
「どっこもおかしくないですです。 ほら、お客さん来ちゃうですよ?」
「そう、ですか? あ、はい、開店、しましょう」
確かに、もう時間がない。
服のことは頭から無くなって、急いで開店をします。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「いらっしゃい、ませ。 どうぞ、こちらの席に」
どうして、でしょうか。
今日は、妙に男性のお客様が多いです。
「フィリスさーん、こっちのお客様にパイをお願いですよー」
「あ、はい――。 少々お待ちください、ませ」
おかげで、目が回る、忙しさですけれど。
「お待たせいたしました、ハーブ鳥の、香草包みパイ、です」
料理を渡した時に、お辞儀をする。
すると、何故か、お客様は、歓声をあげます。
そのたびに、マサムネさんは、何処か不機嫌そうな顔になり
「ああ、もう。 忙しいですから、もうすぐ他のバイトの子きますし、厨房にいくですよ」
そういわれました。
でも、確かにそれも一理あるので、そのまま厨房へと。
ですが、今日はなんだったのでしょう。
閉店した後に、姿見を見てみると
いつもの服ではなくて。
胸の部分を強調されて、サイズも小さくて、スカートが短くて。
「――――――――?!?!」
そんな、ある一日。
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